Sad-Eyed-Lady’s blog

かき鳴らす げんのしらべに もの思う ひとのよのたび 夢げんほうよう

2024-01-01から1年間の記事一覧

草笛ー4

少年とダチュラ 常夜に切れ込む隙間から垣間見る繰り返す日 常の不気味さを他所に、林道を下れば薄暗い 杉の木立から降りしきる蝉時雨は、さっきま でのそれとはうって変わり涼やかな風も吹き なんという調和だろう。先ほどの少年が30 メートルくらい先に…

草笛ー3

学校と祠 池に面した山道を緩やかに少し登れば、家の すぐ裏手に父が通った小中合わせた古い学校 があり広い運動場がひらけている。誰かがひ とり昇降口の段差に腰掛けている。それぞれ 高さの違う鉄棒が三欄隅に置かれているが、 随分と背の高い向日葵がそ…

草笛ー2

溜池と窓 山間にあるその古い家の前には溜池があり、 その脇を山道に続く小路が延びている。赤い 花がその入口を彩り咲いて、池の周りをぐる りと茅が茂り、所々草花も漫ろ顔を覗かせて いる。傍には小さな畑もあり、大輪の立葵が 数本まばらに佇んでいる。…

草笛ー1

序章 目を閉じるとそこは……… 小学三年生の夏休み、それは私にとって家族 との楽しい最後だった。父の生まれ育った新 潟の山に帰省する、関越道が開通する以前の 長距離ドライブ。夢の中へと紛れ込む亜空間 は、妙な既視感に背中を押されるようにして 繰り広…